2016年2月18日木曜日

技と工夫のアーカイブ22 『素で自然とつながる家』 〜障子いろいろ〜

『素で自然とつながる家』 竣工:平成26年10月

今回はいつもと趣向を変えて、この住まいだけでなく、私たちが建てる家に取り入れた障子について紹介します。



まず、この住まいのために造ったのが吉村障子です。以前、このブログでも紹介した通り、框と組子の幅を同じにしたもので、これにより複数の障子を立てたときに全体で一枚の障子に見えるようにしています。障子なのにどこかモダンな印象があります。


こちらは組子を格子状ではなく縦のラインが際立つようにしたもの。
吉村障子のようにモダンというより、ちょっとクラシカルな雰囲気が漂います。
例えば掃き出し窓のような縦長の開口部に採用すると、繊細な感じに見えるかもしれません。





一方、『創の家』で採用したのは月見障子です。
これは掃き出し窓の開口を上下に分割し、上の部分を開けて室内から空を眺められるようにしたもの。その場合下半分は障子があるので、外部からの視線は遮られるというわけです。
この月見障子とは逆に下半分が開くのが雪見障子。室内から雪景色が眺められるようにします。




このように障子と言ってもさまざまな形があるし、断熱の役割を果たすほか、和紙を通すことで外からの光が拡散し、部屋全体を明るくするという効果もあります。
障子は和室の装飾のためだけにあるのではないのですね。


さて、創では2月27日と28日の二日間、完成物件の見学会を開催します。
『空を眺める家』と題したその住まいでは月見障子を採用しました。2階居室の南東面に面し、開放感も抜群です。
ぜひこの機会に、障子など建具の意匠をはじめ、技と工夫のあれこれをじっくりお楽しみください。


会場など詳しい案内は後日、創のブログでお知らせします。


2016年2月12日金曜日

技と工夫のアーカイブ21 『素で自然とつながる家』 〜木製枠のサッシ〜

『素で自然とつながる家』 竣工:平成26年10月


シンプルな箱型の家がいい、というオーダーに応えて生まれました。軒の出をなくし、屋根勾配をゆるくしたことで箱型が強調されました。ともすると素っ気ない印象になってしまいますが、造形のシンプルさはそのままに、見た目に木の家らしい温かみを与えるのが木製枠のサッシです。
最新の高い断熱性能を持つサッシガラスを、オリジナルで作製したサワラ材の枠で仕上げました。サワラは木桶などにも使われるように水に強いのが特徴で、雨にさらされる窓枠には最適です。気密性能はメーカーの樹脂製枠に比べると多少劣りますが、大窓の存在感と木の雰囲気は、家の佇まいに落ち着きを与えます。

天井高いっぱいで幅もだんらんの間の間口に匹敵するワイドさを持つこのサッシは、全開にして壁内に収納できるので、室内からは遮るもののない眺めと開放感が楽しめます。一方窓を全開にして外から室内を見ると、窓の高さと天井高が同じなので造形のシンプルさが際立つとともに、室内の眺めに奥行きが感じられ、部屋を実際以上に広く見せます。






2016年2月5日金曜日

技と工夫のアーカイブ20 『大屋根ささえる手仕事の家』 〜スノコ床とルーバー壁〜

『大屋根ささえる手仕事の家』 竣工:平成26年4月





木の家に長く快適に住むためには、風通しを良くしなければなりません。そのために工夫したのが、越屋根スキップフロアです。特に薪ストーブを入れる場合、その熱を2階まで行き渡らせためにも効果的。一方、夏場は熱や湿気がこもりにくくなるので家の空気を爽やかに保てるのです。この住まいではこの空気循環させる工夫を応用し、ある空間の機能を高めました。それはインナーバルコニーです。

玄関ホールの天井を見上げると、2階の床がスノコ状になっていて、一方の壁面もスノコと同じピッチ幅のルーバーになっています。つまり、壁一面と床が素通しになっていて、1階と2階のインナーバルコニーの空気が循環するようになっているのです。
大屋根にした都合上、外にバルコニーを設けなかったのでインナーバルコニーにしたのですが、閉鎖空間では空気がこもり、洗濯物を干しても乾きにくくなります。そこでスノコ床とルーバー壁にして風通しを良くしたのです。
見た目にも上部の圧迫感がなく、デザイン上のアクセントにもなっているし、開放感があるのが自慢です。